絹とは、蚕の繭から取れるタンパク質でできた動物繊維である。絹の生産は紀元前3000年頃古代中国で始まり、交易品としてローマ帝国まで広まった。
日本にも製法が伝わっていたが品質が低く、また戦乱の影響で生糸を作る技術が失われたことから、養蚕は真綿づくりのために行われていた。
よって中国絹への需要は高く、鎖国されるまで日中貿易における強力な交易品だった。鎖国以後は産地の確保や生産の奨励がなされたことから、中国絹と遜色のない絹の生産が可能となり、1900年代初頭には世界最高の輸出国となった。
第二次世界大戦後は主にヨーロッパでナイロンなどの化学繊維が用いられるようになり、絹産業は衰退した。しかし光沢や触感、吸湿性・通気性・保温性に優れることから高級品としての需要は現在も一定数あり、独自の地位を占めている。
Kuebi = Armin Kübelbeck [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
MOSSOT [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons
繭を熱湯もしくは弱アルカリ液に浸すことで接着が緩み、糸として引き出せるようになる。これを何本かに撚ったものを生糸といい、天然繊維の中で唯一の長繊維であり珍重されている。
害虫などに穴を開けられたり汚れた繭は生糸としては用いられない。これらは同じく接着を緩めたあと綿状にしてから引き伸ばされ、防寒具や布団の中綿として用いられる。これを真綿という。
1kgの絹を生産するために、3,000匹の蚕、そしてその餌である桑の葉が140kg必要と言われている。
光沢と肌触りに極めて優れている。また熱伝導率が低いため、夏は涼しく冬は暖かい。保湿性に優れているため乾燥しづらく、そのため静電気も起こりにくい。こうした反面摩擦や日光に弱く、取扱には注意しなければならない。